在庫管理術
食品製造業のDX【食品製造業の現状と課題・DXに欠かせないスマートファクトリー・DX成功事例・在庫管理DXの重要性】
食品製造業の現状と課題
農林水産省 食料産業局「食品産業生産性工場のための基礎知識*1」によると、食品製造業の出荷額は33.4兆円で自動車製造業、化学工業に続き、従事者数では日本最大の巨大産業です。
それなのに、生産性は低く製造業平均の約60%しかありません。
これは、日本の製造業の生産性は国際的に上位ですが、食品産業の生産性は中進国レベルの生産性と同程度ということを意味しています。
このことから、食品製造業の給与は、国内製造業のなかでも最低レベルであり、中進国程度といっても過言ではないとも言われています。
近年の人手不足・人材不足の問題は、とりわけ食品製造業で深刻化していることもあり、生産性の向上が急務となっています。
このような状況を踏まえ、農林水産省では、ロボット、AI(人工知能)、IoTなどの先端技術の導入支援や、その技術の橋渡し役となるシステムインテグレーター(SIer)*との接点づくりの促進を図ることにより、食品産業におけるイノベーションを創出し、食品産業の生産性向上を推進しています*2。
この記事では、デジタル技術を使ったDXが解決する食品製造業の課題、実際にDXを導入した事例を具体的に解説していきます。
また、生産性向上のために欠かせない在庫管理DXがもたらす効果やメリット、IoTを使った製造業DXの成功事例もご紹介!
*1 農林水産省 食料産業局「食品産業生産性工場のための基礎知識」
*2 農林水産省「食品製造業等の生産性向上」
*システムインテグレーター(SIer):システムの導入を検討している顧客に対して、「分析」「開発」「運用」等の全ての工程を総合的に請け負うサービスのこと。
*人手不足に関する詳細は「人手不足【日本の現状・深刻な業界・影響とデメリット・原因・解消法と成功事例】」の記事を参照してください。
食品製造のDXとは
DX(ディーエックス)とは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略。
具体的には「AIやIoTなどの先端的なデジタル技術の活用を通じて、デジタル化が進む高度な将来市場においても新たな付加価値を生み出せるよう従来のビジネスや組織を変革すること」です。
食品製造業におけるDXとは、AIやIoTなどのデジタル技術を導入することで、人手不足など様々な課題を解決し、生産性の向上を図る取り組みのことを指します。
ただし、2021年6月25日~6月29日の富士電機が食品製造業従事者(製造・生産、生産管理・品質管理、技術・研究開発、経営企画・事業企画、情報システム、その他)に実施した「食品製造業におけるDXに関する意識調査*」によると、以下のような回答結果に、
- DXという言葉の普及状況
「全社的に利用されている」と回答したのは全体の10.6%、「経営層でのみ使われている」が7.4%、「一部の部門・部署で使われている」が18.0%となった。「あまり使われていない」の回答は全体の42.2%となった。 - DXへの取り組み
「現在取り組んでいる」は全体の13.6%、「今後取り組む予定がある」が15.6%、「必要性は感じているが、取り組んでいない」が21.2%となった 。「取り組んでおらず、必要性も感じていない」の回答は全体の26.8%となった。
このように、食品製造業ではDXはまだまだ進んでいないのが現状ですが、一方で、DXを推進することによる期待効果については、
- 「生産性の向上」49.5%
- 「データの活用・見える化の推進」40.4%
- 「働き方改革の推進」37.4%
という回答があり、DXへの大きな期待度も明らかになっています。
人手不足をはじめ、円安や原材料高騰の影響など経営に大きな打撃を与える課題を解決し、現場の期待効果に応えるためにも、経営陣や現場責任者は一刻も早いDX導入の決断が迫られていると言えるでしょう。
*富士電機「食品製造業におけるDXに関する意識調査」
*DXの詳細は以下の記事も参照してください。
・DXとは【経済産業省の定義・進め方・必要な理由や技術と人材・推進のメリット・導入事例】
・製造業のDXとは【製造業の課題とDXのメリット・ツール・成功事例】
食品製造業のDXに欠かせないスマートファクトリー
スマートファクトリー(スマート工場)とは、工場の機器、設備、工場での作業データをAIやIoTなどの先端テクノロジー技術を使ってデジタル化。
データを収集・分析し、活用することにより、業務プロセスの改革、品質・生産性の向上を継続発展的に実現する工場のことを指します。
食品製造業がDXを推進する具体的な取り組みが食品工場のスマートファクトリー化です。
食品製造業でスマートファクトリー化を実施し、DXを推進していくことで以下のようなことが可能になります。
人手不足・人的ミスの削減
例えば、製造工程の一部をAIを搭載したロボットが担当。このことにより、新たな労働力の確保、手作業や目視では防げなかった人的ミスが大幅に減ります。
データ活用
製品の使用状況や使用環境を分析することで、顧客のニーズを把握。
需要にあった製品を的確に提供することが可能なほか、新たな製品やサービスの企画も可能になり、顧客満足度アップにもつながります。
見える化
製造ラインに設置したセンサーの情報を自動的かつ遠隔で収集し、分析ができるAIやIoTの導入。
設備の稼働状況を見える化。異常を検知した場合はアラームなどで通知も可能。
フードロス対策
AIやIoTを使った需要予測による的確な原材料の発注・在庫管理を行うことで過剰な仕入れによるフードロスを削減。
適正在庫の維持
過剰在庫によるフードロスの削減のほか、欠品を出さない最小限の在庫数である適正在庫を維持することは、高騰する原材料対策にも寄与。
無駄な製造にかかる電気代やガス代などの光熱費対策にも。
これらの課題を解決することが、生産性の向上や働き方改革、企業の新しい不可価値の提供や顧客評価、ひいては利益の拡大にもつながっていきます。
*以下の記事もご参照ください。
・スマートファクトリー|スマートファクトリーの定義とIoT活用事例
・フードロス【日本の現状・デメリット・対策や取り組み・IoTを使った有効対策と事例】
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食品製造業のDX成功事例【日清食品・三島食品・マルハニチロ】
- 実際にDXをいち早く導入し、成果をあげている食品製造業の事例をいくつかご紹介します。
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日清食品
- 2019年3月に関西工場(滋賀県)で無人化工場を目指した次世代型スマートファクトリーのため、パナソニックの品質管理カメラシステム/映像・音響システムを導入。
NASA(Nissin Automated Surveillance Administration)室と呼ばれる集中監視・管理室を品質管理システムの心臓部と位置付け。
設備、品質管理カメラ、電気、水道、人など工場内のすべての情報を画面上で一括管理することにより、ライン内に人が入らなくても、機械の稼働状況、製造工程すべてを映像と数値データから把握し、管理することを可能に。
製品管理データを製造後もサーバー内に長期間保存することで、問題が発生した場合でも即座にトレースできる体制を構築。
また、ロボット技術を活用することで、これまで人の手で行っていた確認、検査、原材料や容器などの移動を自動化。
人が介在しない作業工程を確立することで、人為的リスクを低減。工場に入荷された資材は、自動搬送台車で、指定された場所に搬送される仕組み。
三島食品
主力生産拠点である広島工場にBIダッシュボード*を導入。
生産状況や実績など社内のあらゆる業務を「目で見る管理板」に掲示、見える化する企業文化がもともと根付いていた同社では、リアルタイムの情報把握を目的に管理板の電子化に着手。
同時に生産設備のIoT化も進め、生産スケジュールの管理、工場内の温湿度管理、生産設備の稼働監視、原材料の品質管理、業務インシデントの可視化などを実現。
*BIツール:企業が持つさまざまなデータを分析・見える化して、経営や業務に役立てるソフトウェア。
*ダッシュボード:複数の情報源からデータを集め、概要をまとめて一覧表示する機能や画面、ソフトウェア。
マルハニチロ
2013年「スマートファクトリー構想」をスタート、プロジェクトチームを発足。
工場の稼働状況に関するデータを分析するのはもちろんのこと、チームが工場へ足繫く通い、自らの目で製造工程や業務内容を確認したり、従業員へのヒアリングをするなど半年をかけて徹底的に全国の工場の現状把握を実施。
その結果、一部の業務しかデジタル化が進んでおらず多くが手作業だったこと、そして工場によって業務プロセスが異なるという、2つの課題が浮上。
2014年には、システムに求める機能要件を90項目に整理。パートナー企業とともにシステムの要件定義・設計・開発・テストを行い、2017年から直営工場へシステムの導入を開始。
システム導入により、ペーパーレス化/デジタル化を実現し、紙などの記録管理業務に要する時間が大幅に減少し、従業員の負担が軽減。
また、ハンディ端末やタブレット端末に表示される製造指示に従って製造を行うことで、人的ミスを未然に防ぐシステムを構築。
このスマートファクトリー化で作業がより明確になったことで、一人ひとりの努力が数値化・見える化され、従業員が改善に前向きに取り組める環境に。
食品製造業の在庫管理にDXが欠かせない理由【効果・メリット】
在庫管理は、適正な在庫を維持し、顧客に満足してもらえる商品を提供するために欠かせない業務です。
すでにお話した通り、人手不足や原材料や物流コスト増加などさまざま課題を解決しなければならない食品製造業にとって、在庫管理のDXこそ、真っ先に取り組むべきだと言われています。
実際にすでに在庫管理のDXを導入した食品製造業の企業からは、具体的に以下のような効果やメリットがあったという声が挙げられています。
ミスの削減
目視で在庫を顔え、ノートに数量を記入するなど、アナログ手法が取られていることが多い在庫管理業務。
DXを導入することで、数え間違い、発注ミスといった人的ミスを大幅に削減できます。
欠品や過剰在庫の防止にも繋がります。
人手不足・人的負担の解消
在庫が保管されている倉庫まで、いちいち数えに行ったり、本来の仕事の合間に行うことが多い在庫管理。
DXを導入することで、業務負担を減らし、労働コストや時間を削減。さらに、「ミスをしたらどうしよう…」といった心的ストレスも解消し、働き方改革にも繋がります。
適正在庫の維持
DXを導入することで、欠品による機会損失を防ぎ、企業利益を最大にする在庫量である適正在庫の維持が可能に。
必要な時に必要な量の製品・商品・サービスの提供可能になるので、顧客満足度アップにも繋がります。
このように競争の激しい食品製造業にとって、生き残りのために欠かせない多くの課題を解決できるのが在庫管理のDXです。
次の章では、誰でも簡単に在庫管理の自動化・見える化が可能なソリューションとして、現場のDXニーズに応えるIoT機器をご紹介します。
実在庫を見える化するDXソリューション!スマートマットクラウド
現場のあらゆるモノをIoTで見える化し、発注を自動化するDXソリューション「スマートマットクラウド」を使えば、簡単に自動化が可能です。スマートマットの上に管理したいモノを載せるだけで設置が完了。
あとはマットが自動でモノの在庫を検知、クラウド上でデータを管理し、適切なタイミングで自動発注してくれます
さまざまな自動発注に対応
お客様の発注先に合わせた文面でメール・FAXの送信が可能です
在庫圧縮を促進
推移を把握できるグラフで適切な在庫量を判断し、在庫圧縮を促進します
置く場所を選びません
スマートマットはA3サイズ〜A6サイズまでの4サイズ展開。ケーブルレスで、冷蔵庫・冷凍庫利用も可能。
API・CSVでのシステム連携実績も多数
自社システムや他社システムと連携を行い、より在庫管理効率UPを実現します。
スマートマットクラウドで在庫管理DXを実現した食品製造業の導入事例