在庫管理術
フードロス【日本の現状・デメリット・対策や取り組み・IoTを使った有効対策と事例】
この記事では、日本のフードロスの現状、フードロスがもたらす深刻なデメリット、事業所の対策・取り組みについてわかりやすく解説します。またフードロス対策に有効なIoTを利用した在庫管理の方法と成功事例もご紹介!
フードロスとは
「フードロス(英語:Food loss/食品ロス)」とは、本来食べられるにもかかわらず食品を廃棄してしまうことを指します。
日本のフードロスの現状
令和4年6月に農林水産省・環境省から発表された「食品ロス量*」によると、令和2年度の日本の食品ロス量推計値は、522万トンとなり、前年度より48万トン減少しました。前年度より減少したとはいえ、522万トンは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料支援量(2020年で年間約420万トン)の1.2倍に相当します。実に毎日大型トラック(10トン)約1,430台分を廃棄していることになります。
食品ロスを国民一人当たりに換算すると「おにぎり1個分(約113g)」の食品が毎日捨てられていることになります。
*参照:消費者庁「食品ロス量(令和2年度推計値)の公表について」
*参照:農林水産省「食品ロス量(令和2年度推計値)の公表について」
*参照:環境省「我が国の食品廃棄物等及び食品ロスの発生量の推計値(令和2年度)の公表について」
フードロスが問題になっている理由【デメリット】
日本はもちろん、世界的にも大きな問題とされ、対策が進められているフードロス。
具体的にフードロスはどのようなデメリットをもたらすのか見ていきましょう。
環境悪化
捨てられた食品は処理工場に運ばれ、可燃ゴミとして処分。水分を含む食品は、運搬や焼却の際に地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)を排出します。また、焼却後の灰の埋め立ても環境負荷につながります。
廃棄コスト
廃棄するためには、ゴミの運送代、焼却代、廃棄場所の確保代など多くのコストがかかります。
人口増加と栄養不足
世界人口は急速に増加し、2050年には約97億人と推定されています。その一方で、世界の栄養不足人口(2020年)は、7億6,800万人。これは世界人口の10人に1人の割合です。
持続可能な開発目標(SDGs)では、貧困を撲滅し、持続可能な世界を実現するために17のゴール(目標)を設定。そのうち、目標12に「持続可能な生産消費形態を確保する」が掲げ、各国に対応を求めています。
参照:消費者庁 令和4年6月14日「食品ロス削減撲滅資料」
フードロスの区分と原因【なぜ発生する】
フードロスは、大きく以下の2つに大別されます。
家庭系フードロス
買い物のしすぎで腐らせてしまう、野菜の皮を過剰に剥く、作りすぎて食べきれないとことが原因で家庭内で起こるものを、家庭系食品ロスと呼びます。
事業系フードロス
食品メーカー、スーパーやコンビニ、ファミリーレストランなどの飲食店、サービス業企業や病院、学校等から出るものを、事業系食品ロスといいます。事業系フードロス(食品ロス)になってしまう原因に次のようなケースがあります。
- 在庫管理が不十分で、必要量以上に食品の発注を出している
- 流通の過程(スーバーやコンビニの店頭)で賞味期限切れになってしまう
- 会社が販売できる量以上の食品を製造・調理をし、売れ残る
日本のフードロスの半分以上は事業所から排出されたもの。日本国内全体のフードロスを減らすためには企業の努力が不可欠です。
日本のフードロスは世界で何位?
世界の食料廃棄の現状を見てみましょう。FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、世界の食料廃棄量は年間13億トン。
これは人のために生産された食品の約1/3を廃棄していることになります。
国連の補助機関であるUNEP(国連環境計画)が、まとめた初の世界の食品ロスに関するレポート「UNEP Food Waste Index Report 2021(世界の食品ロスの統計*)」によると、日本は14位。
順位 | 国名 | 食品廃棄量(トン) |
1位 | 中 国 | 91,646,213 |
2位 | インド | 68,760,163 |
3位 | ナイジェリア | 37,941,470 |
4位 | インドネシア | 20,938,252 |
5位 | アメリカ合衆国 | 19,359,951 |
6位 | パキスタン | 15,947,645 |
7位 | ブラジル | 12,578,308 |
8位 | メキシコ | 11,979,364 |
9位 | バングラデシュ | 10,618,233 |
10位 | エチオピア | 10,327,236 |
11位 | フィリピン | 9,334,477 |
12位 | エジプト | 9,136,941 |
13位 | コンゴ | 8,912,903 |
14位 | 日本 | 8,159,891 |
先進国の中では、かなり上位に位置しています。
参照:UNEP Food Waste Index Report 2021(世界の食品ロスの統計)
なぜ日本は食品ロスが多いのか?
食品ロスの原因はさまざまですが、日本の食品ロスの大きな要因と言われているのが、食品業界の「3分の1ルール」。これは、「食品の納入期限を賞味期限の3分の1以内」とする流通・小売業界特有の商慣行です。
賞味期限切れの商品が店頭に並ばないよう、メーカーと小売りが交わす納品上の取り決めでもあります。
賞味期限が3ヶ月の食品の場合、メーカーなどは1ヶ月以内に小売店まで納品しなければならないため、納品が遅れた食品は廃棄されることも多く、食品ロスの要因と言われていました。
2019年7月に公表された「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)の基本方針で、2000年度(547万t)を基準に、2030年度には半減(273万t)させる目標を設定。
農林水産省は食品業界の経営層に強く見直しを求める方針を決め、さまざまな取り組みを推し進めています。
フードロスは何が1番多い?
ハウス食品グループ本社は2021年1月、自社会員サイト登録者を対象に「食品ロスに関する最新アンケート*」を実施し、その結果を2021年3月に発表しました。
それによると、家庭内で捨てる食材で最も多いのが、「野菜類」で68.1% 。次いで「果物」で17.4%、「日配品」(日持ちしにくい食品)で16.4%。となっています。
より具体的に見てみると、
1位 みかん
2位 きゅうり
3位 大根
4位 豆腐
5位 牛乳
6位 納豆
7位 パン
8位 白菜
9位 キャベツ
10位 レタス
また、期限が近づいてきて焦ったことのある食品では、
1位「牛乳」。以下、豆腐、納豆、卵、ヨーグルト、肉類、ハム・ソーセージ、パン、魚介類、ドレッシングという回答が得られています。
参照:ハウス食品グループ本社「食品ロスに関する最新アンケート」
フードロス対策や取り組み事例
農林水産省及び環境省は、事業者や消費者、地方公共団体、関係省庁とも連携し、国民運動として、より一層のフードロス削減のための取組みを進めています。
企業のフードロスを減らす取り組みの内容としては、
- フードロスの実態把握
- フードロス削減を目的とした通販
- 消費者、子供達への啓発や教育
- 飲食店での啓発促進
- 災害用備蓄食料の有効活用
- フードバンク活動と連携
などがあります。
フードロスに対する地方自治体の取り組み
平成30年度、「飲食店での啓発促進」に関する取組の中で、食べ残しを減らす取組を実施している飲食店の店舗数を把握している地方公共団体数は149(平成29年度:89)、店舗数の合計は13,650(平成29年度:9,914)と着実に成果をあげていることがわかっています*。
地方自治体で行われている独自のユニークな取り組みの一例を紹介します。
- どさんこ愛食食べきり運動(北海道/食育)
- 余っている食品を持ち寄りフードバンク団体へ寄付(仙台/フードドライブ)
- もったいないレシピなごや(名古屋/食品ロスを減らすレシピ紹介)
- スマイル!ひろしま(広島/食品ロス削減キャンペーン)
- 食べ残しあかんでOSAKA(大阪/食べ残しゼロ推進店の目印)
*参照:消費者庁「平成30年度の地方公共団体における食品ロス削減の取組状況」
フードロス企業の取り組み
フードロスを削減するために多くの企業でも取り組みを始めています。その具体例をいくつかご紹介します。
スターバックス コーヒー ジャパン
2021年8月から、店舗での食品の廃棄を極力減らす、「フードロス削減」を目指すプログラムをスタート。
廃棄としてフードを無駄にしないため、ドーナツやケーキ、サンドイッチなどの店舗ごとの当日の在庫状況に応じて、閉店3時間前をめどに20%OFFで販売。
販売を促進してフードロスを削減するとともに、このプログラムによる売上の一部を認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえに寄付し、地域の子どもたちの食を通じたより良い未来作りに。
オイシックス・ラ・大地株式会社
有機・無添加食品、ミールキットの通信販売を行う会社。
フードロス削減アクションという取り組みを行っており、「家庭と畑のロスを削減できるミールキット」や、品質には問題ないのに、一般的な流通の規格にあわないサイズなどの理由で販売することのできない「もったいない商品」を販売。
TABETE
まだおいしく安全に食べられるのに、「食品ロス」になってしまいそうな食事をレスキューできる「フードシェアリングサービス」。
店頭で売り切れないパンやお惣菜、予約のキャンセルが出てしまった食事、食材の端材でつくったオリジナル商品など、様々なおいしい食事が出品されており、「TABETEアプリ」から近くで助けを求めているお店の商品を検索、レスキュー価格でテイクアウトできます。
2022年12月時点で、株式会社ドトールコーヒー「エクセルシオール カフェ」など99店舗、「エキュート赤羽」「ビーンズ」「シャポー」を運営するジェイアール東日本都市開発など多数が導入。
国内のフードロス削減がすすまない背景・問題点
さまざまな取り組みが進むのにもかかわらず、事業系フードロスは深刻さを増しています。
コロナの影響によって、イベント中止、店舗営業自粛、休校があいつぎ、廃棄を余儀なくされる食材が急増。大きな社会問題になっています。
コロナ以前より、食品を扱う企業・事業所では、台風や大雪など天候や災害など消費の変化が予測できない場合があり、その度に事業者は食糧在庫をいかに捌いていくかを考え、対策を講じる必要があります。
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