在庫管理術
棚卸システム【在庫管理を効率化・自動化するシステム選び完全ガイド】

この記事では、棚卸システムの基本的な役割や目的、従来の方法との違い、そして作業を簡単にする具体的な仕組みについて解説します。
棚卸システムとは?初心者でもわかる基本解説
棚卸システムとは、在庫を正確かつ効率的に管理するために必要な情報を一元化し、自動的に計測・記録できる仕組みのことです。
従来の手動で実施する棚卸では、商品や資材を数え間違えたり、記録ミスが起こりやすかったため、膨大な時間とコストがかかっていました。棚卸システムを導入することで、棚卸の正確性が格段に向上し、同時に作業時間や人的ミスを大幅に削減できるようになります。
棚卸システムの役割と目的
棚卸システムの主な役割は、在庫数や在庫場所、在庫の動きを把握できるようにすることです。これにより、次のような目的を達成することが期待できます。
- 在庫の最適化:在庫の過不足を防ぎ、コストを削減
- 業務効率の向上:手動入力や二重チェックを削減し、人的ミスを減らす
- 正確なデータ管理:売上や仕入れとの連携で経営判断をスムーズに行う
従来の棚卸方法とシステム導入後の違い
従来の棚卸は、商品や資材を目視で数え、紙に記入して担当者が集計するという流れが一般的でした。
棚卸システム導入後は、現場でツールを使って在庫を読み取るだけでデータが自動集計されるため、手作業の負担を大幅に削減できます。さらに、集計されたデータは自動的にシステムに反映されるため、集計ミスや二重入力などのリスクを大幅に減らすことが可能です。
棚卸システム活用のメリットとは?
棚卸システムを導入すると、担当者全員で在庫情報を共有しやすくなります。棚卸作業のスピードと正確性を飛躍的に向上させる棚卸システムの活用のメリットをお伝えします

- 即時の在庫確認:棚卸作業時点での在庫数を自動更新
- 作業フローの標準化:誰でも同じ手順で正確に棚卸を実施
- データの可視化:クラウドを活用しオンライン上で在庫や棚卸進捗を把握
棚卸を効率化するシステムとは?
棚卸作業を効率化し、正確性を高めるためには、以下のような技術や仕組みが活用されています。
●バーコード運用
商品や部品、資材にバーコードを付与し、ハンディスキャナーやスマートフォンアプリなどで読み取って在庫数を管理する手法です。紙やエクセルに直接入力する必要がないため、転記ミスを大幅に削減できます
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導入コストが比較的低い:バーコードラベルやスキャナー等シンプルな機器で始められる
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操作がわかりやすい:バーコードをかざすだけで、短期間で現場に定着しやすい
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一括読み取りはやや苦手:1点ずつスキャンする必要があり、商品点数が膨大な場合は時間がかかることも
●クラウド型在庫管理システム
インターネット経由で利用する在庫管理システム・WMSです。サーバーを自社で用意する必要がなく、導入しやすいのが特徴。リアルタイムでデータを更新し、複数拠点での在庫情報を常に最新状態に保つことができます。
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初期費用が低めでスピード導入可能:月額制や利用料のみで始められるサービスが多い
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場所を問わないアクセス:PCやタブレット、スマホからどこでも在庫を確認・更新できる
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カスタマイズに制限がある場合も:クラウドサービスの仕様に合わせる必要があり、オンプレミスに比べ自由度が低いことも
●ERP(在庫管理モジュール)
ERP(Enterprise Resource Planning)は、会計や販売管理、購買管理など企業の主要業務を一元管理するシステムです。その中の在庫管理モジュールを活用することで、棚卸作業を含む在庫データを他の業務と連動させ、経営判断をよりスピーディーに行えるようになります。
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社内システムとの高い連携性:販売情報や仕入れ情報をリアルタイムで反映でき、在庫の最適化に役立つ
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大規模組織や複数拠点に強い:業務フロー全体の把握・分析がしやすく、グローバル展開している企業にも対応可能
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導入ハードルが高め:システム導入・カスタマイズ費用や、現場の運用ルール整備などに手間とコストがかかる
評価軸 | バーコード 運用 |
クラウド型在庫管理システム | ERP(在庫管理モジュール) |
---|---|---|---|
作業時間 | 1点ずつスキャンする必要があり、点数が多いとやや時間がかかる | 一括データ更新・自動集計が可能で作業時間を短縮 | 作業時間を短縮しつつ、他の業務情報と連携することでさらなる効率化 |
人為ミスのリスク | 転記ミスが大幅に減るが、一括スキャンが難しく、漏れが生じる場合も | 自動計算・リアルタイム更新でミスを最小化できる | ERP上で在庫数を一元管理するため、販売や仕入れとの齟齬が起きにくい |
コスト | 機器購入やバーコード発行など、比較的低コストで導入可能 | 初期導入費用が低めだが、月額サービス料が継続的に発生する | システム導入・カスタマイズに高額な初期費用がかかるが、統合管理効果が高い |
リアルタイム更新 | スキャナーやアプリで読み取り直後に更新できる | クラウド上で常に最新データを反映。複数拠点の情報集約も容易 | 他モジュール(会計・販売管理など)とも連動し、最新在庫数を把握可能 |
導入負担 | 操作が簡単で導入しやすいが、ラベル貼付など現場の負担が多少ある | システム連携に多少の調整は必要だが、オンプレミスほどではない | 組織全体で使うための調整・教育コストやカスタマイズが大きい場合が多い |
自動化を推進する棚卸システム
「棚卸にかかる手間をほぼゼロにしたい」という製造現場では、スキャン作業そのものを排除できる自動化ソリューションが選ばれています。ここでは主要な4タイプの概要とポイントを整理し、導入効果を比較します。
●重量センサー
棚板やラックにスマートマットを設置し、重量変化を在庫数に自動換算する方式です。
在庫をリアルタイム更新できるため、スキャンも巡回も不要です。24 時間監視で欠品リスクを未然に防ぎ、棚卸の“事後集計”が不要になります。工事や大改修は不要で段階導入が可能です。
●RFID
すべての品目にRFIDタグを貼付し、固定リーダーやハンディ端末で電波を一括読み取りして在庫を更新する仕組みです。
ポイント非接触・視線不要で箱の中でも読み取れるため、大量・多品種を高速カウントできます。タグ単価と電波環境の整備コストが課題になります。
●棚スキャンロボット
倉庫・工場の通路を自律走行し、バーコード/RFID/カメラで棚を丸ごとスキャンして在庫を収集するロボットです。夜間巡回で棚卸を無人化し、人件費を大幅に削減できます。画像解析で欠品や陳列乱れを同時に検知できますが、走行ルート設計と障害物対策が不可欠です。
●自動倉庫(AS/RS*)
クレーンやシャトルがパレットやケースを自動搬送・格納し、入出庫と棚卸を完全自動化する大規模設備です。24時間無人稼働も実現でき、入出庫が即、在庫更新のため棚卸作業がほぼ不要になります。
多額の初期投資と倉庫レイアウトの全面改修が前提となります。
*AS/RS:Automated Storage and Retrieval Systemの略称
自動化ソリューションの比較
評価軸 | RFID | 重量IoT | 棚スキャンロボット | 自動倉庫(AS/RS) |
---|---|---|---|---|
作業時間 | 一括読み取りで秒単位 | 完全ゼロ(置くだけ) | 人手ゼロ、巡回時間のみ | 完全ゼロ(入出庫=棚卸) |
人為ミスのリスク | 極小(読取漏れのみ注意) | ほぼゼロ | ほぼゼロ(画像解析精度依存) | ゼロ |
コスト | タグ×点数+リーダー | センサー&設置工事 | ロボット本体+保守 | 非常に高(設備・建屋改修) |
リアルタイム更新 | ◯(ほぼ即時) | ◎(常時) | ◯(巡回後に反映) | ◎(常時自動更新) |
導入負担 | タグ貼付・電波環境整備 | 棚改修・配線 | ルート設計・設備クリアランス | 大規模設備導入・レイアウト全面改修 |
自動化ソリューションは投資規模と省力化インパクトが比例します。
まずは重量センサー型IoTで“置くだけ自動棚卸”を始め、段階的にRFIDやロボットと組み合わせて拡張するのが、コストと効果を両立させる現実的なステップです。
棚卸システムの選び方
自社に合った最適な棚卸システムを見つける5つのポイント
棚卸システムは導入後の運用期間が長く、現場オペレーションに直結するシステムです。「現場で本当に使いこなせるか」「将来の業務拡張に耐えられるか」をコスト・運用負荷・サポート品質を総合的に比較することが重要です。システム選定時に必ず抑えたい5つのポイントを解説します。
①使いやすさ ― 現場が直感的に操作できるか
-
UI/UX の分かりやすさ
画面遷移やボタン配置がシンプルで、マニュアルを読み込まなくても操作できる設計か確認しましょう。習熟コスト
新人スタッフでも数時間から数日で習得できるシステムであれば、現場負荷を最小化できます。デモやトライアル期間を活用し実際の操作感を確かめることが大切です。
②クラウド型 or オンプレミス型 ― 運用方法とコストの違い
自社のITガバナンスやセキュリティ要件、キャッシュフローに合わせて最適な方式を選びましょう。
比較項目 | クラウド型 | オンプレミス型 |
---|---|---|
導入スピード | 申し込み後すぐ利用可能 | サーバー構築が必要で時間を要する |
初期費用 | 低い(月額課金中心) | 高い(ハード+ライセンス) |
既存システム連携 | API前提で連携が容易 | 自社開発や個別接続が必要 |
セキュリティ | ベンダーの最新対策を享受 | 社内ポリシーに合わせて設定 |
③導入コストとランニングコスト ― “総額”で比較する
-
初期費用
ライセンス・機器購入・設置工事を合算し、投資回収期間(ROI)を試算します。 -
月額/年額費用
クラウド利用料、保守サポート費、バージョンアップ費など、運用フェーズで発生するコストを確認しましょう。 -
隠れコスト
社内教育やデータ移行、カスタマイズ費用も忘れずに見積もることが重要です。
④拡張性 ― 長期運用を見据えた連携・カスタマイズ
API連携の有無
会計・販売管理・MES など他システムとシームレスに連動できるかをチェックします。
モジュール追加・カスタマイズ
ビジネス拡大や自動化レベル向上に合わせ、RFIDやAI需要予測などを後付けできるプラットフォームが理想的です。
⑤サポート体制 ― 運用フェーズを支える伴走力
-
導入時サポート
現場ヒアリング、設定、初期トレーニングの有無を確認します。 -
運用支援・障害対応
専用ヘルプデスクや24時間対応、オンサイト保守の有無など、ダウンタイムを最小化する体制があるかが鍵になります。 -
マニュアル・教育資料
日々の運用に役立つ動画マニュアルやFAQが整備されているかも評価ポイントです。 -
業界別おすすめの棚卸システム
-
業界 | おすすめシステム | 選定ポイント |
---|
小売業 | クラウド型在庫管理システム | 複数店舗やECとリアルタイム連携しやすく、サーバー不要で導入が早い |
製造業 | RFID×重量IoT連携型システム | 多品種の部品・仕掛品を自動&一括読取でき、ライン停止を防ぐフレキシブル管理 |
物流業 | AI在庫管理システム | 機械学習による需要予測で在庫・人員を最適化し、大量出荷を効率化 |
小売業ならクラウド型在庫管理システム
多店舗展開やECを運営する小売業では、「どの拠点に何がいくつあるか」を瞬時に把握することが欠かせません。クラウド型ならブラウザだけで在庫数を共有でき、自動発注や売上データとの連携もスムーズ。店舗間移動やオンライン/オフライン統合に強みを発揮します。
製造業ならRFID×重量IoT連携システム
製造現場では、部品や仕掛品を正確・高速にカウントできるかが生産効率を左右します。RFIDによる個別管理と重量IoTによる数量管理の併用で、棚卸の現場負担を最低限に抑え、ライン停止前の部材不足アラートも実現。在庫最適化もトレーサビリティも同時に叶えます。
物流業ならAI在庫管理システム
荷量が日々変動する物流業では、需要を先読みした棚卸・ピッキング計画が鍵となります。AI在庫管理システムは、過去出荷データや季節要因を学習し、最適在庫を自動提案。保管スペースの圧縮と人員配置の最適化により、コストとリードタイムを同時に削減します。
棚卸システム導入の失敗を防ぐポイント
失敗事例から学ぶ!棚卸システム導入時のリスク
棚卸システムは導入して終わりではなく、「現場定着」までが成功のゴールです。ここでは、よくある失敗パターンと具体的な対策をまとめました。事前にチェックリストとして活用し、導入リスクを最小化しましょう。
失敗事例 | ありがちな原因 | 有効な対策 |
---|
システムが業務フローに合わなかった | ・業務プロセスの棚卸不足 ・ベンダー任せで要件が曖昧 |
- トライアルやPoCを活用し、実運用シナリオで検証 - 現場ラインとIT部門が合同で要件定義を行う |
従業員が使いこなせず定着しなかった | ・UIが複雑で操作が難しい ・導入時の教育が不十分 |
- 導入前後で操作研修を実施し、動画マニュアルを整備 - 運用ルール(誰が・いつ・どう使うか)を明文化 |
コスト削減ばかり重視して機能不足だった | ・価格だけで比較し、将来の拡張を考慮せず契約 | - 必須機能/将来必要な機能をリスト化し、優先度を設定 - 初期費用だけでなく5年後までのROIを試算して評価 |
導入失敗を回避する3つのポイント
導入時の落とし穴は3つのポイントで回避することができます。要点を抑えた棚卸システムは長期的なコスト削減と業務効率化をもたらす強力な武器になります。
- ヒアリング&トライアルで“現場フィット”を確認
- 操作教育・マニュアル整備で早期定着を促進
- 価格と機能のバランスをROIで判断し、拡張余地も確保
“置くだけ” で棚卸を自動化する スマートマットクラウド
「数える」から「載せるだけ」へ。
「スマートマットクラウド」は人の手を介さず在庫をIoTで見える化し、棚卸を超効率化するDXソリューションです。
重量IoTを内蔵したスマートマットが、在庫の増減を 24 時間リアルタイムで検知し自動記録します。
●在庫置場へ行く必要ナシ。PCでどこからでも在庫確認
棚卸のために物流をストップする必要も在庫置き場まで移動する必要はありません。パソコンの管理画面から在庫金額とその推移をグラフで確認できます。
●現物と帳簿のズレがゼロに
リアルタイム実在庫の自動計測のため棚卸差異が発生しません。差異の原因調査にかかっていたコストも削減します。
スマートマットクラウドによる棚卸効率化の成功事例
スマートマットクラウドは、現在多くの企業様に導入いただいています。導入をきっかけに棚卸を効率化し、人的ミスを大幅に削減した事例をご紹介します。
この記事を書いた人

スマートマットクラウド メディア編集部
スマートマットクラウド メディア編集部です。業務効率化や業務の課題解決などをわかりやすく解説します!
【スマートマットクラウドとは?】
スマートマットの上にモノを置き続け、重さで数を数えるIoTサービスです。
ネジなどの部品、副資材・仕掛品・粉モノや液体の原材料まで、日々の在庫確認や棚卸・発注まで自動化します。
この記事を監修した人

製造DX協会
製造DXに取り組む製造業・スタートアップ・エキスパートが集結し、企業の垣根を越えてノウハウを共有しながら社会全体に最適な製造DXガイドラインを発信しています。
https://manufacturingdx.org/