在庫管理術
ホテルDXをバックヤードで推進すべき理由|人手不足でも成果がでる在庫管理の自動化
ホテル業界におけるDX推進は、主にフロント領域から進んできました。しかし、人手不足の構造課題を踏まえると、バックヤード業務の効率化にも目を向ける必要があります。本記事では、在庫管理の自動化を起点とした現実的なDXの進め方を整理します。
この記事でわかる「ホテルのDX」に課題と実行の道筋
- フロントDXだけでは現場が楽にならない「構造的な理由」と解決策
- アメニティやリネンの「数える作業」をゼロにするIoT重量計の仕組み
- スモールスタートで確実に成果を出すための導入ステップ
ホテル業界の人手不足とDXの現在地

宿泊業界では現在、需要回復が進む一方で、人手不足が継続する状況にあります。客室単価(ADR)は上昇傾向にあり、稼働率も回復基調にありますが、運営を支える人材の確保は依然として容易ではありません。
厚生労働省の労働経済動向調査(2025年5月)によれば、宿泊業の欠員率は全産業平均を大きく上回っており、現場は慢性的な長時間労働を強いられています。多くのホテルが自動チェックイン機やAIチャットボットといった「フロントDX」を導入しましたが、これらはあくまで「対顧客」の効率化です。
ホテルDXの取り組み領域は大きく分けて次のように整理できます。
- フロント業務(セルフチェックイン、モバイルキー、AIチャットなど)
- 清掃・オペレーション管理(客室ステータス連携、清掃管理アプリ)
- レベニューマネジメント(価格最適化、需要予測)
- バックオフィス(勤怠・会計・購買管理)
- バックヤードの物品・在庫管理
この中で、投資が先行しやすいのは「フロント領域」です。一方で、人手不足の影響を最も強く受けているのは、日々の運用を支えるバックヤード業務です。

しかしホテルの業務全体を見渡すと、清掃、リネン補充、アメニティ発注、食材管理といった「バックヤード業務」が依然としてアナログな人海戦術で行われているケースが大半です。この領域を効率化やDX推進しない限り、真の生産性向上は実現しません。
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参照記事:国土交通省 観光庁「観光DXの推進」>>
なぜ「フロント」だけでは不十分なのか?見落とされがちなバックヤードの課題
フロント業務の効率化が進む一方で、バックヤード業務の運用は従来型のまま残っているケースが少なくありません。アメニティ、リネン、飲料、清掃用消耗品などの在庫管理を、手書き台帳やExcelで行っているホテルも依然として存在します。
在庫管理は日常業務の一部として組み込まれているため、問題が顕在化しにくい領域です。しかし、運用実態を整理すると、次のような構造的課題が見えてきます。

1. 属人化リスク
在庫状況を特定の担当者の経験や勘に依存している場合、急な退職や異動、休暇が業務停滞リスクにつながります。
2. データと実在庫の乖離
手書きメモからExcelへの転記、週次・月次更新といった運用では、在庫変動とのタイムラグが発生します。その結果、理論在庫と実在庫のズレが常態化しやすくなります。
3. 業務負担の蓄積
接客や清掃の合間に行う在庫確認は、断続的な作業として積み重なります。可視化されにくいものの、総工数は無視できません。
これらの課題は、個々のスタッフの能力の問題ではなく、「人が数える」ことを前提とした運用設計そのものに起因します。バックヤード業務の生産性を高めるには、まずこの前提を見直す必要があります。
【解決策】IoT重量計「SmartMat Cloud」で実現する在庫管理DX

バックヤード業務の生産性を高める方法の一つが、在庫管理の自動化です。その具体的な手段として、IoT重量計を活用した管理手法があります。
SmartMat Cloud(スマートマットクラウド)は、棚やラックに設置した重量センサーを通じて、在庫の重さを継続的に計測し、クラウド上で可視化する仕組みです。管理対象物(例:アメニティ、リネン、飲料、消耗品など)をセンサー上に配置することで、個数や残量を自動換算し、データとして蓄積します。
主な機能は以下の通りです。
1. 在庫の自動計測と可視化
定期的な重量計測により、在庫数量を自動更新します。担当者が倉庫に赴いて目視確認する運用を前提としません。
2. 発注点管理と通知
あらかじめ設定した在庫水準(発注点)を下回った場合、メールやチャットツールを通じて通知します。属人的な判断に依存しない発注管理が可能になります。
3. 発注業務の自動化(オプション機能)
設定に応じて、在庫減少をトリガーに発注メールやFAXを自動送信する運用も可能です。取引条件や運用設計に応じて導入可否を検討できます。
このように、IoTを活用することで、在庫管理を「定期的に確認する業務」から「常時監視する仕組み」へと転換できます。結果として、在庫確認に伴う移動・目視・記録といった作業を最小化し、人的リソースを本来の業務へ再配分することが可能になります。
【事例】導入ホテルが実証した「棚卸し工数大幅削減」と「付加価値業務への集中」
実際にSmartMat Cloudを導入し、バックヤード業務の自動化とサービス向上に成功している宿泊施設の事例をご紹介します。
Case 1:新宿ワシントンホテル様(藤田観光株式会社 / 客室数1,281室)
・課題:本館1,281室という圧倒的な物量に対し、在庫管理スキルを持つ人材が不足。月1回の棚卸しには2名体制で3日を要し、手計算によるヒューマンエラーのリスクと担当者の心理的負担が大きな課題であった。
・導入効果:アメニティ類を中心に導入した結果、対象品目(全体の約25%)の棚卸しはCSV出力と残数確認のみとなり、体感として数分で完了するほど激減。また、在庫が閾値を下回った際の通知メールにより発注判断がデータ化され、「倉庫へ見に行く手間」もゼロに。欠品リスクを抑えながら適正在庫を探る土台が完成。
Case 2:ホテルフォルツァ大阪なんば道頓堀様(株式会社エフ・ジェイ ホテルズ / 客室数180室)
・課題:深刻な人手不足の中、清掃スタッフの目視による在庫確認では発注漏れや数え間違いが多発。月次の棚卸と在庫表の作成に5〜6時間を奪われており、生産性のない業務の省人化が急務であった。
・導入効果:アメニティや洗剤など約40品目を管理。自動化により発注漏れや確認の手間を大幅に削減。在庫管理業務の負担から解放され、スタッフはレベニューマネジメントや顧客サービスなど付加価値を生み出す業務に専念できるように。結果としてRevPAR(客室単価×稼働率)の向上にも寄与した。
失敗しないホテルDXの始め方:効果が分かりやすい物品管理の自動化をスモールスタート
「ホテルDX」と聞くと、PMSの刷新や大規模なシステム改修を想像されるかもしれません。しかし、最初から全館・全部門を変えようとすると、現場の混乱や抵抗が生まれ、プロジェクト自体が停滞するリスクがあります。
重要なのは、効果が見えやすい領域から始めることです。在庫管理の中でも、とりわけアメニティやリネンなどの消耗品管理は、
- 工数削減が時間で測定できる
- 欠品率の改善が数値で示せる
- 発注回数や在庫金額の変化が明確に分かる
という点で、成果を定量化しやすい領域です。
🏨専門家の視点:スモールスタートの推奨
最初から全品目を対象にしないことが重要です。まずは、「回転が速い」「種類が多い」「目視管理が難しい」などの“管理負荷の高い品目”に絞って数台からスタートすることをお勧めします。そこで「棚卸し時間が◯時間削減できた」「発注漏れがゼロになった」という事実を作れれば、DXの勝ち筋となります。こういった成功体験は、次の投資判断の後押しにもなります。
DXは一気に完成させるものではなく、成果を積み上げていくプロセスです。ホテルの在庫管理の自動化は、その最も現実的で再現性の高い第一歩といえるでしょう。
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ホテルDXに関するよくある質問(FAQ)
Q1. ホテルにおけるDX化とは何ですか?宿泊業DXとはどういう意味ですか?
A. ホテルDXとは、IT・IoT・AIなどのデジタル技術を活用して、宿泊業務や顧客体験を抜本的に改善する取り組みです。予約・チェックイン・清掃管理・在庫管理などをデジタル化し、人手不足解消とサービス品質向上を同時に実現することが宿泊業DXの目的です。
Q2. ホテルDXを進めるメリットは?人手不足やリスク対策に効果はありますか?
A. ホテルDXのメリットは、省人化による人手不足対策、業務効率化、データ活用による付加価値向上です。ホテルの3大リスク(人材不足・事故/クレーム・収益悪化)への対策としても有効で、星野リゾートなどのDX事例が注目されています。
Q3. ホテルDXはどこから始めるべきですか?業界動向や事例は?
A. まずはチェックイン・在庫・清掃など負荷の大きい業務からデジタル化するのが一般的です。ホテルDXスタートアップやDX企業のサービス活用、老舗旅館DXの事例も増えており、2025年、2026年に向けてホテル業界全体でデジタル化が加速しています。
まずは「在庫管理コスト」の無料診断から
ホテルDXの第一歩は、現状の「見えないコスト」を把握することから始まります。
SmartMat Cloudでは、貴社の客室数や管理品目数から、導入による「削減可能な時間とコスト」を試算する無料シミュレーションを実施しています。
「うちの規模でも効果が出るのか?」「どの品目から始めるべきか?」といったご相談も歓迎です。














