在庫管理術
毒劇物管理【毒物及び劇物取締法を下に管理者の負担を軽減するシステムとは?】
こちらは、毒物劇物について「毒物及び劇物取締法」の下、運用や保管方法・在庫確認について解説します。毒物及び劇物の管理効率化に活用できるシステムも紹介しますので、ぜひご一読ください。
毒劇物とは?わかりやすく解説
毒物劇物とは「毒物及び劇物取締法」の下に、日常流通する有用な化学物質のうち、急性毒性による健康被害が発生する可能性が高い物質を毒物もしくは劇物として指定し、保健衛生上の観点から必要な規制が設けられています。
毒物及び劇物取締法ではさらに、毒物*1・劇物*1・特定毒物*2の3種類に分類。いずれも工業的・研究的用途として流通が不可欠なモノで、急性の健康被害が発生し得る物質として規制、管理されています。
例えば一般的に毒物としてよく知られている「青酸カリ」は、有機合成や金の精錬・電気メッキなど工業分野において有用です。次いで「水銀」*3は研究分野で気圧や真空測定器具に使用されています。また「ヒ素やヒ素化合物」は半導体分野で数多くの用途があります。
これらは全て毒物及び劇物取締法の「毒物」に分類されており、法律の規制の下に用いることが可能です。一方でサリン・VXガスは生物兵器ともなり得る毒物ですが、有用性は全くなく、日常流通もありえません。そのため、「毒物及び劇物取締法」とは別の法律*4で規制されています。
*1:「毒物及び劇物取締法」で指定された物質であり、医薬品及び医薬部外品以外のモノ。化合物をグループ名で掲載していることも多く、判断が付かない場合は自治体への問い合わせが必要となる。
*2:「特定毒物」の場合は、使用・所持するにも行政の許可が必要となる。
*3:水銀は古くから医療器具や電気製品、工業製品に幅広く使用されていたが、現在では数多くの安全な代替品があり、使用用途は限られてきている。
*4:「サリン等による人身被害の防止に関する法律」による。現物や製造を目的とした原料の所持にも刑罰が科せられる。
毒劇物の管理とは?「毒物及び劇物取締法」を下に説明
毒物及び劇物取締法において、指定されている毒物劇物を製造・輸入・販売するためには、行政機関(都道府県知事)への登録が必要です。
但し業務上の取り扱い(自消)のみであれば、登録の必要はありません*5。しかし毒物劇物を取り扱う病院・研究機関・農業者についても、「毒物及び劇物取締法」の規制下には置かれるため、法律を遵守*6する必要があります。
*5:但し「特定毒物」の場合は、使用者となるのも政令による指定が必要(毒劇法3条の2,3より)です。
*6:特に環境マネジメントシステム「ISO 14001」において取り組む順守評価で、毒物劇物取締法を適用した場合にはとりわけ注意すべき法律となります。
毒劇物の規制① 管理者を決める
管理者として取扱者や使用者とは別に、取扱責任者を決める必要があります。(詳細は後述。毒劇法第7条による)
毒劇物の規制② 「毒物劇物危害防止規定」を定める
毒物劇物による事故や犯罪を未然に防止するため、製造・販売・輸入・取扱している毒物劇物の品目・量・取扱方法などの態様に応じて「毒物劇物危害防止規定」を定める必要があります。
これは企業側の自主的な策定・整備となるもので、毒物劇物の管理・責任体制の明確化、緊急時の連絡・通報体制*7、設備保守点検の内容、取扱者等への教育および訓練が含まれたマニュアルのようなものです。
*7:盗難・紛失の場合は速やかに警察署/最寄りの保健所に連絡。流出・漏洩事故の場合は速やかに保健所、警察署または消防機関に連絡し、保健衛生上の危害を防止するために必要な応急措置を講じること。
毒劇物の規制③ 保管・表示・重量確認・記録などの運用方法
毒物劇物は盗難・紛失防止のための保管措置を採らなくてはいけません。部外者の興味を引いたり、毒物劇物がある場所を容易に知られたりしないように、敷地境界線から十分に距離をとった場所、もしくは一般人が容易に近づけない場所に保管場所を設置する必要があります。
また、保管場所は管理者の目が行き届く場所であること、施錠することが必要であり、鍵も使用者・使用日時が明確になるような管理表で運用しなければなりません。また保管場所には「医薬用外毒物」もしくは「医薬用外劇物」と表示し、毒物劇物の貯蔵タンクや容器自体にも同様に表示します。
さらに毒劇物と他のモノが紛れないように正確に区別して保管することが大切です。特に毒物劇物を食品用の容器に移し替えることは、誤飲防止・犯罪抑制のため法律により厳しく禁止されています。
また毒物劇物は定期的な在庫の重量確認が義務づけられています。毒物劇物の製造・販売・輸出入・購入・取扱をした場合、日時・担当者・品目・含有量・重量・目的などを記録する管理簿もしくは管理台帳を作成し、毒物劇物の定期的な在庫量の確認のために運用することが必要です。
毒劇物の規制④ 設備保守点検・災害対策
毒物劇物の流出や漏洩を防ぐために、貯蔵・保管・陳列・運搬に関わらず適切な設備であることを、定期的に点検しなければなりません。貯蔵タンクや放出パイプなどにヒビ割れなどの劣化がないか・液留めの囲いが堅牢であるか・仕切り等で保管容器(瓶)同士がぶつからないように防止できているか等を確認します。
また運搬の場合は、積載方法・運搬方法の基準を遵守し、車両に法で定められた毒劇物表示を行い、車両から目を離さないための助手の同乗が必要です。また万が一、運搬中に流出した場合のため、毒物劇物の名称/成分/含量/応急措置内容を記載した書面と保護具を備えなければなりません。
また震災や火災などにより、毒物劇物の流出や化学反応による被害を最小限に抑えるために、保管棚の転倒防止・流出防止トレーの設置・貯蔵タンク周囲の流出防護枠などの対策を怠らないようにしましょう。
毒劇物の規制⑤ 廃棄
毒物劇物を廃棄する場合は、必ず「毒物劇物でない状態」へ処理してから廃棄します。一般的には、化学分解や燃焼・中和・希釈などの方法で処理を行い、保健衛生上の危害が発生しない状態にしてから廃棄*8することが義務づけられています。
また自己処理できない場合は、都道府県知事の認可を受けた廃棄物処理業者に毒物劇物の処理を依頼しなくてはなりません。
*8:毒物及び劇物取締法の他、水質汚濁防止法・大気汚染防止法・下水道法など、他の法令の規定する基準にも適合していなければ廃棄することはできません。
毒劇物の管理者にはどのような業務がある?
製造業の中でも研究部署や製造現場で毒物劇物を取り扱う企業は、専任の取扱責任者を置かなくてはいけません。取扱責任者は薬剤師・厚生労働省令で定めた学校で応用化学に関する学課を終了した者・都道府県知事が行う毒物劇物取扱試験に合格した者のいずれかに該当する人物であることが必要です。
毒物及び劇物の取扱責任者は、毒物劇物および指定品目の購入*9・保管・在庫管理・廃棄までの適正な対応を行う管理者としての業務があります。また製造・貯蔵・陳列・運搬に関わらず、いずれの設備でも漏洩や流出が起こらず、さらに地震などの災害も想定し適切な設備状態を保っているかなどの点検も業務に入ります。
前述した「毒物劇物危害防止規定」における規範の遵守や管理、取扱者への訓練など、ほとんどのケースで取扱責任者が深く関わります。
*9:購入に限らず、製造・輸出入・販売・取扱に及ぶ。また管理項目も担当者・日時・品目・重量・含有量・SDS(安全データシート)添付・流出時の対応など多岐にわたる。
毒劇物管理の課題|精度と頻度を求められる在庫管理
毒物劇物の管理は多岐に渡りますが、最たる課題は日常的に消費・使用される毒物劇物の在庫管理や保管場所の施錠・鍵の管理が大きな負担となっています
- 管理簿に記載された使用者・品目・使用量と実際の状況の確認工数にかかる労力
- 液体・粉体の様態が多いため、目視では正確な在庫量が把握できず計量が必要
- 遮蔽性の容器での保管等により、紛失や持出し過多に気づき難い
- 紛失や持出し過多を防止するため、高頻度の在庫確認が求められる
- 実在庫と理論在庫の乖離、差異があれば大きな問題となる
- 危険性の高い毒物劇物の在庫確認や計量は心身共に負担が大きい
このような毒物劇物の在庫管理の課題は、IoT重量計によるリアルタイム在庫管理システムで解消することができます。
責任者の負担を軽減し、正確な在庫管理を可能にする方法とは
IoT重量計を用いて毒物劇物の在庫管理を行うと、リアルタイムかつリモートで実在庫の変動把握が可能です。管理画面上の在庫量と毒物劇物の管理簿を照合することで、確認工数を抑制。心身ともに大きい取扱責任者や監督者の負担を軽減できます。
また管理簿と実在庫データを照合することで、理論値との乖離をいち早く察知。持ち出し過多や紛失、盗難の早期発見・対応が可能となります。わざわざガスマスクやゴーグル・手袋などを装着し、保管場所を開錠、規制品目の在庫量の計量・記録、施錠、鍵の管理、報告などの工数の多い在庫確認の頻度を大幅に減らすことが可能です。
毒劇物の管理工数を大幅削減!リアルタイム在庫管理システム「スマートマットクラウド」
現場のあらゆるモノをIoTで見える化するDXソリューション「スマートマットクラウド」を使えば、在庫管理、棚卸の自動化が可能になります。IoT重量計による重量計測のため、数えにくい液体・粉末形状の資材・毒物劇物や、管理の難しい中途使用品や仕掛品も正確に計測。
倉庫や各拠点に点在している在庫、冷蔵庫や保管庫の中など、見えない場所の在庫もIoT重量計に載せるだけで遠隔から一元管理します。
もちろん保管条件が厳しく、在庫確認に精度と頻度が求められる毒物劇物も管理画面の重量変化と管理簿を照合させるだけで使用状況の確認がとれます。管理工数が多いだけでなく、心身ともに負担の大きな毒物劇物の在庫確認を最大限に効率化できます。
◆特徴
- 在庫管理工数削減:日次での在庫確認と発注を自動化
- 欠品・過剰在庫防止:自動発注機能の活用で適正在庫を維持
- 在庫差異を縮小:重量計測で正確な在庫数を自動記録