在庫管理術
DPC制度とは【いつから・対象病院や患者・出来高算定との違い・メリットとデメリット】
この記事では、DPC制度とは何か、対象病院や患者、出来高算定との違い、メリットとデメリットをわかりやすく解説します。
DPC制度とは【わかりやすく・簡単に】
DPC制度(DPC/PDPS:Per-Diem Payment System)とは、平成30年度診療報酬改定の概要DPC/PDPS*閣議決定に基づき、平成15年4月より82の特定機能病院を対象に導入された急性期入院医療を対象とする診断群分類(1,572分類)に基づく1日あたり包括払い制度のことで「包括医療費支払い制度」とも呼ばれています。
わかりやすく説明すると、傷病名、病状、手術、処置、検査などにより、患者の入院の治療内容を分類(診断群分類)して、その診断群分類ごとに医療費を計算する方式。
厚生労働省保険局医療課がまとめたによると、制度導入後、DPC/PDPSの対象病院は段階的に拡大され、平成30年4月1日見込みで1,730病院・約49万床となり、急性期一般入院基本料などに該当する病床*の約83%を占めています。
医療機関は、診断群分類ごとに設定される在院日数に応じた3段階の定額点数に、医療機関ごとに設定される医療機関別係数を乗じた点数を算定します。
*平成30年度診療報酬改定の概要DPC/PDPS
*平成28年7月時点で7対1または10対1入院基本料を届け出た病床。
DPC制度と従来の出来高算定の違い
従来からの医療費の計算方式である「出来高払い方式」では、診療で行った検査や注射、投薬などの量に応じて医療費が計算されていましたが、DPC制度の計算方式では、病名や手術、処置などの内容に応じた1日当たりの定額の医療費を基本として全体の医療費の計算を行います。
この1日当たりの定額の医療費は、既に新しい医療費の支払い方式を実施している全国の大学病院における実際の診療データに基づき、診断群分類ごとに標準的に必要とされる検査や注射、投薬などの費用を含んだ1日当たりの入院医療費の算出を行い、決定されました。
DPC制度による入院費は、入院する患者の「最も医療資源*が投入された傷病名」を基本に、「その他の傷病名」「病状」「検査」「治療内容」に応じて厚生労働省が定めた診断群分類ごとの1日当たりの定額医療費に医師の手技料や病院ごとの施設基準による加算などをプラスして計算します。
ただし、手術やリハビリテーションなどの医師の専門的な技術料(一部の処置や検査)については、これまで通りの出来高算定で医療費は計算され、入院にかかる医療費は定額分と出来高分を合わせたものとなります。
*医療資源:診療報酬の点数だけでなく、医師、看護師、技師等の労力も含む。
DPC制度の歴史【いつから】
DPC制度は、すでにご紹介した通り、閣議決定に基づき、平成15年4月から導入されました。
導入に先立ち、平成10年11月から平成16年3月まで、国立病院など10病院における1入院当たりの急性期入院医療包括払い制度の試行が実施。
試行開始後の検討で、以下のような課題が明らかになりました。
- 同じ疾患であっても患者によって入院期間のばらつきが大きい
- 1入院当たりの包括評価制度と比較して1日当たりの包括評価制度の方が、在院日数がばらついていても包括範囲点数と実際に治療にかかった点数との差が小さい
- 1日単価を下げるインセンティブ*が存在する
これらを踏まえ、平成15年度から、特定機能病院を対象に、定額算定方式として「在院日数に応じた1日あたり定額報酬を算定する」というDPC制度が導入されました。
*包括評価制度:行われた診療行為の点数を加算するのではなく、診断された傷病名や手術・処置などの内容に応じて定められた1日当たりの点数を基本として計算する方法。
*インセンティブ:人々の行動を決定させたり変化させたりする動機付けや報奨金。
DPC制度対象病院の要件
DPC制度対象病院は、以下のすべての要件(届出と調査に適切に参加)を満たす必要があります。
- 急性期一般入院基本料、特定機能病院などの7対1・10対1入院基本料の届出
- A207診療録管理体制加算*の届出
- 当該病院を退院した患者の病態や実施した医療行為の内容などについて毎年実施される調査「退院患者調査」
- 中央社会保険医療協議会の要請に基づき、退院患者調査を補完することを目的として随時実施される調査「特別調査」
- 調査期間1月あたりのデータ病床比が0.875以上
- 適切なコーディング*に関する委員会を年4回以上開催
*A207診療録管理体制加算:適切な診療記録の管理を行っている体制を評価するもの。患者に対し診療情報を提供している保険医療機関において、入院初日に限り算定する。入院初日とは、第2部通則5に規定する起算日のことをいい、入院期間が通算される再入院の初日は算定できない。
*コーディング:カルテに記載されている病名などを、世界保健機構(WHO)の定める分類(ICD=国際疾病分類)に従い、コード(符号)化すること。
DPC算定病床
DPC算定病床とは、DPC制度の対象となる以下の一般病棟です。
- 一般病棟入院基本料
- 特定機能病院入院基本料
- 専門病院入院基本料
- 救命救急入院料
- 特定集中治療室管理料
- ハイケアユニット入院医療管理料
- 脳卒中ケアユニット入院医療管理料
- 小児特定集中治療室管理料
- 新生児特定集中治療室管理料
- 総合周産期特定集中治療室管理料
- 新生児治療回復室入院医療管理料
- 一類感染症患者入院医
- 小児入院医療管理料
ただし、DPC算定病床の対象とならない以下は出来高算定*となります。
- 出来高算定の診断群分類に該当する患者
- 特殊な病態の患者(入院後24時間以内に死亡した患者、生後7日以内の新生児の死亡、臓器移植患者の一部、評価療養/患者申出療養を受ける患者など)
- 新たに保険収載された手術等を受ける患者
- 診断群分類ごとに指定される高額薬剤を投与される患者
DPC制度のメリット【患者側・病院側】
では、DPC制度には患者側・病院側双方にとって、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
患者側
- 診療の標準化・透明化
- 診療の質の向上
- 医療費が安くなる*
*出来高算定は薬や検査が多くなると、医療費もそれに伴って高くなっていたが、DPC制度は1日当たりの医療費が定額制のため、治療過程で薬が多くなったり、入院が長引いたとしても、患者が支払う医療費は変わらない。
*DPC制度では、「最も医療資源が投入された傷病名」「検査」「治療内容」などの組み合わせとご入院の日数により医療費が決まるので、出来高算定と比べて、場合によっては高くなる場合もある。
*1日当たりの診療点数は、1入院につき3段階に区分されており、入院が長くなるほど1日当たりの点数は低くなる。ただし、入院が長期にわたり定められた入院日数を超えてしまうと、出来高算定での計算となる(定められた入院日数は診断群分類により異なる)。
病院側
- 医療の質を一定にキープ
- 医療の標準化・効率化を推進
- 病院側の診療報酬が増加
DPC制度は病院側にデメリットも?
DPC制度が導入されると、自院でのデータ分析だけでなく、他の病院との比較ができるようになるため、自院が他院より優れている点がわかりますが、一方で他院より劣っている点や課題も明らかになります。
DPC制度による医療の効率化は、平均在院日数の短縮というメリットもある反面、以下のような課題も生み出しています。
- 治療が早く済む反面、患者に十分な療養ができなくなることも
- 地方病院での病床の稼働率が低下による病棟閉鎖
このようにDPC制度下は、とりわけ地域医療を支えている地方の病院の経営・運営にデメリットをもたらすこともあります。
そのため、DPC制度下では医療コスト、とくに医療材料費や薬剤費を軽減させることが病院収益に直結するとされると言われています。
次の章では、医療材料費や薬剤費を軽減、医師や看護師の働き方改革をサポートする今、話題のIoTについてご紹介!
DPC制度のデメリットを解消するIoT
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