在庫管理術
在庫回転率【向上させる方法とは?適正値、計算方法、改善事例を解説】

在庫回転率は企業が保有している在庫の仕入れから販売までの速さを示す数字で、ある期間に在庫が何回入れ替わったかを表しています。この記事では、在庫回転率を把握するメリット、適正値、計算方法、改善方法をわかりやすく解説。実際に改善に成功した事例もご紹介します。
在庫回転率とは?【算出の目的】
在庫回転率の概要
在庫回転率とは、企業で一定期間に保有している在庫が何度入れ替わったかを示す指標です。
棚卸資産回転率、商品回転率とも呼ばれており、仕入れから販売までのスピードを数値化することで、在庫がどれほど効率的に“お金”へ変わっているかを把握するのに役立ちます。
一般的には在庫回転率が高いほど、在庫が滞留しにくく健全な状態を保っていると判断されますが、数値が極端に高い場合には仕入不足による機会損失のリスクが高まるため注意が必要です。
在庫回転率を算出する目的
在庫回転率は売れ筋や死に筋の商品を把握し、需要予測を立てること、在庫がコントロールできているかチェックし、健全な経営ができているか確認することを目的として計算します。
在庫回転率を把握することは次のようなメリットにつながります。
- 所有している在庫状況の見える化
- 欠品による機会損失を防止
- 過剰在庫を削減し、余分なコストをカット
- 顧客ニーズを把握し、経営状態の健全化
在庫回転率の計算方法
在庫回転率の計算方法は、大きく分けて「数量ベース」と「金額ベース」の2種類があります。どのデータを用いるかは、在庫管理の目的や算出したい指標によって使い分けると効果的です。
数量ベースの計算方法
在庫数や出庫数など“モノの動き”そのものに着目して算出するため、現場の在庫管理や発注計画などの実務に直結しやすい方法です。
●計算式
- 在庫回転率= 出庫数 ÷ 平均在庫数
- 平均在庫数=(期首在庫数 + 期末在庫数)÷ 2
具体例をあげて説明します。
●具体例
期首在庫数:1,000個
期末在庫数:600個
期間中の出庫数:3,000個
まず平均在庫数を求めます。
平均在庫数 = (1,000個 + 600個) ÷ 2 = 800個
つぎに在庫回転率を算出します。
在庫回転率 = 3,000個 ÷ 800個 = 3.75回
この場合、一定期間内に在庫が約3.75回転したことになります。
金額ベースの計算方法
財務指標として、在庫に投下されている資金がどのくらい効率良く回っているかを把握するのに役立つ方法です。管理会計や経営判断、財務諸表作成の場面で重視されています。売上ではなく「売上原価」を用いることで、実質的な仕入れコストをもとに算出できます。
●計算式
- 在庫回転率= 売上原価÷棚卸資産
- 売上原価= 期首商品棚卸高+当期商品仕入高 - 期末商品棚卸高
在庫回転率と在庫回転期間
現場レベルで消費ペースを理解しやすくするために、在庫回転期間を求めて、在庫の仕入れから販売までの速さを示す方法もあります。 在庫回転期間を出すことで何日分・何ヶ月分の在庫を抱えているかが実態がわかります。
- 在庫期間= 棚卸資産÷売上原価
在庫回転率の適正値
在庫回転率の適正値は企業ごと、業種ごとに異なるため、一律には語れません。
商品特性によって在庫回転の速度は大きく異なり、生鮮食品や消耗品を扱う業態ほど回転率が高く、ファッション・繊維製品など流行やサイズ在庫を抱える業態ほど低い傾向があります。
主な産業大分類ごとの値は次のとおりです。
- 製造業:11.1
- 小売業:11.4
- 卸売業:19.9
*参照:経済産業省「中小企業の商品(製品)回転率」
自社の在庫回転率のチェックポイント
「在庫回転率は高ければ良い」という単純なものではなく、ビジネスの特性や商品特性、顧客需要の変動などを考慮した最適解を目指すことが重要です。自社の回転率が業界平均に近いかどうかをひとつの目安としながら、継続的に数値を検証し、改善策を実行し続けることが安定した経営につながります。
自社の在庫回転率を判断する際は、以下のポイントをあわせて確認しましょう。
自社の過去データとの比較
同じ業種の平均値だけにとらわれず、自社の在庫回転率の「前年・前期比」など長期的な推移を追うことが大切です。改善トレンドが見られれば、経営の健全化に近づいていると判断できます。
商品カテゴリやシーズンごとの違い
一括りに「在庫」と言っても、売れ筋と死に筋、季節商品と通年商品などでは回転率が異なります。それぞれのカテゴリごとの在庫回転率をモニタリングし、重点的に改善すべき領域を見極めます。
過剰な在庫回転率のリスク
在庫回転率が高いほどキャッシュフローが改善しやすい一方、過度に回転率を追求しすぎると仕入数が不足しやすくなり、欠品による売上機会の損失につながる場合があります。理想は適正在庫を確保しつつ、必要な分だけ素早く回転させるバランスです。
在庫回転率を上げる方法
在庫回転率を高めることは、在庫管理担当者にとって大きな課題の一つです。以下のポイントを押さえることで、在庫の滞留リスクを下げ、企業の利益改善に繋げることができます。
目標値を明確に設定する
過去データや業界平均値を参考に
まずは自社の商品カテゴリーや過去の実績、同業他社の水準などをもとに、達成可能かつ挑戦的な数値目標を設定します。
在庫単位で設定する
商品ごとに目標在庫回転率を決めることで、売れ筋と死に筋を正確に把握し、優先すべき対応を明確化しやすくなります。
小まめなモニタリングを習慣化する
決算期のみの確認では、在庫滞留や需給変化を見逃しやすくなります。月次・週次など、頻度を上げて在庫回転率をチェックしましょう。
変化をいち早く発見する
モニタリングの精度を高めることで、消費動向の変化や需要変動に素早く対応し、リードタイムや価格戦略の見直しをタイムリーに行えます。
不動在庫を徹底的に整理する
滞留在庫を可視化する
在庫回転率が低い商品を定期的に洗い出し、社内で一元管理します。動きの悪い在庫は早期に処分や値下げ販売などの対策を検討しましょう。
売れる見込みがなければ早めに決断
不動在庫を長期間抱えておくと、保管コストや機会損失が増えます。処分や廃棄も含め、スピーディーな判断が重要です。
在庫回転率を改善!「スマートマットクラウド」
スマートマットクラウドは、現場のあらゆるモノを見える化し、在庫管理・棚卸・発注を自動化する在庫管理サービスです。重量IoTを使用したスマートマットの上に管理したいモノを載せるだけで、設置が完了。あとはマットが自動でモノの在庫を検知、クラウド上でデータを管理し、適切なタイミングで自動発注してくれます。
遠隔からリアルタイムで実在庫数を確認
在庫確認の際に倉庫などの保管場所にいちいち赴くことなく、パソコンの管理画面「在庫一覧」からリアルタイムの在庫情報を確認できます。
蓄積したデータから在庫回転率を算出
スマートマットクラウドは日々の棚卸を自動化。蓄積したデータから短期間で在庫回転率を割り出すことが可能です。在庫回転率の計算に必要だった実施棚卸をする必要がありません。
ボトルネック在庫を特定し、在庫回転率を改善
スマートマットクラウドは在庫の動きを自動で見える化します。ボトルネックになっている不動在庫や過剰在庫、在庫切れの危険のある在庫を特定し、在庫回転率の改善に貢献します。
在庫回転率の改善の成功事例
▼在庫の見える化で在庫回転率を0.28から0.82と大きく改善(SGモータース株式会社)

部品在庫を手動で実地棚卸をしていたため、在庫差異が多く発生。また、欠品しないよう在庫に余裕を持たせて発注していたため、過剰在庫に陥っていた。スマートマットクラウド導入後は、在庫の可視化で約30%もの在庫削減に成功。在庫回転率も0.28から0.82と大きく改善した。
この記事を書いた人

スマートマットクラウド メディア編集部
スマートマットクラウド メディア編集部です。業務効率化や業務の課題解決などをわかりやすく解説します!
【スマートマットクラウドとは?】
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