在庫管理術
飲食店のDXとは【成功事例やメリット・デメリット、解決するべき課題とは?】
飲食店のDXとは【定義をわかりやすく】
飲食業界は、開業3年で7割前後が廃業し、10年続くのは1割程度ともされる競争の激しい業界です。外食産業総合研究センターの試算によると、2021年の外食産業の市場規模は約18兆円と報告されています。
さらにコロナ禍を経て、非対面・非接触の注文や会計などのビジネスモデルが変化した飲食業界では、今後も生き残るために業務そのものを変革し、新しい価値を提供するDXが必要となっています。
DXとはそもそも、「データやデジタル技術を活用して製品・サービス・ビジネスモデルを変革し、顧客や社会にとって新しい価値を提供することで競争性の優位に立つこと」*1と定義されています。
これを飲食店に当てはめると、飲食店のDXとはデータやデジタル技術を活用することで、接客や会計・予約・仕入れ・在庫管理・客筋や売れ筋分析などの業務を変革し、顧客満足度や「待ち時間が少なく、混雑しておらず、ゆとりのある接客対応で心地よく過ごせた」など、顧客体験を向上させることです。
しかしながら、デジタルツールの導入やデータ処理そのものが最終目標になってしまったり、業務改善は行われたものの顧客満足度や集客に繋がらなかったりすると、DXに成功したとは言い難いでしょう。
顧客や社会のニーズを理解し、デジタルツールやデータ処理を活用して新しい価値を顧客に届け、顧客満足度を向上させてこそ飲食店のDXと言えます。
*1:経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」
飲食店DXのメリットとデメリット
実際に飲食店にDXを導入することで、どのようなメリットがあるのか具体的に紹介します。またデメリットに併せて失敗事例やその要因についても探っていきましょう、
メリット
DX推進のメリットは業務効率化による店舗スタッフの業務負担軽減だけではありません。コスト削減やデータ分析により新たな商品・サービスが提供できるため、顧客にも有益であり、厳しい競争社会を生き残れる要因となるメリットがあります。
- 業務の効率化
- コスト削減
- 人手不足解消
- 蓄積データの活用
- コロナ対策(非接触・非対面でのサービス提供)
- 顧客満足度アップ
- 新たな商品、サービスを提供
タブレットや専用機器を用いて注文をモバイル・テーブルオーダーシステムを活用したり、電子マネーやクレジットカード・交通ICなどのキャッシュレス決済、POSレジ*2を活用したレジ締めや販売データの記録・集計・分析をしたりすることで、さまざまな業務効率化が可能です。
データ集計・分析がカンタンにできると、商品の売れ筋や時間帯による客足の変化など、今まで見えなかった有益なデータを見える化でき、新メニュー・新サービスなど新たなマーケティングに繋がり、結果的に顧客満足度にも貢献するでしょう。
またどの飲食店でも共通する大きな業務負担となっている食材の在庫管理・棚卸や仕入れといった業務をデジタルツール*3で自動化することで、業務負担を大幅に減らせます。複数チェーン店であれば、共通システムを利用して本部で一括で仕入れ・価格管理することで、業務負担を減らすだけでなくコストダウンにも繋がります。
さらにアプリによるテイクアウトの事前注文やウーバーイーツや出前館といったデリバリー専門業者による配達を活用することで、今までと変わらない人数でテイクアウトやデリバリーといった新たなサービスを導入することが可能。結果、顧客満足度の向上にも繋がります。
*2:POSレジとは商品を販売した際に生じた金銭のやり取りの情報を、販売時点でデータ記録・集計するシステムを備えたレジのこと。現在では様々な形態に対応したキャッシュレス機能や集計したデータからあらゆる分析・管理が可能な機能が付随したものが多い。
*3:スマートマットクラウド(SMC)を用いれば、在庫管理・棚卸・発注が自動化できる。
デメリット・失敗事例
飲食店のDXは顧客満足度の向上を最終目標として正しく進めると、ほとんどデメリットはありません。しかし以下のようなことが原因で失敗することもあります。
- デジタルを急ぐあまり、接客や気配りや笑顔が減り、サービスが無機質なものになり、顧客満足度の低下に繋がる。
- ネット環境の整備や、利用する端末の購入費などがDX推進の費用負担が賄えない。
- デジタルが苦手、スタッフによる拒否反応が強く、使いこなせない。
このようにDXの失敗事例を招かないためにも、事前に自店舗やグループチェーンに適したシステム・デジタル技術かどうか、対費用効果があるのか、また導入時や導入後のカスタマーサービスが受けられるのかを確認しましょう。
飲食店のDX導入成功事例
アフターコロナの飲食店の新たな経営手法に欠かせないDX。実際にDXを導入した飲食店の興味深い取り組み・成功事例をご紹介します。
株式会社すき家(ゼンショーホールディングス)
人工知能(AI)・クラウド・IoT・セルフオーダー・セルフキャッシング等のデジタル技術やITによるデータ活用により、店内業務の効率化と顧客利便性の向上を推進。また仕入調達については、ゼンショーホールディングスのグループ共通のシステムで運用することで仕入れコストの低減を計っている。
結果、顧客の利便性が向上しさまざまな環境変化への柔軟かつ迅速な対応が可能となった。またグループ内で同じ基幹システムを利用することで、店舗・工場・物流・本部の生産性向上に繋がった。
株式会社すかいらーくホールディングス
全社横断的にDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、事業活動の変革と2025年戦略ビジョンの実現を目指している。デリバリー効率の最大化と配達員の採用難度の低下を目指し、注文ごとに自動的に配達ルートが表示される「配達員専用アプリ」を導入。
注文受け作業の削減による店舗生産性の向上、回転率UPによる客数増のためにデジタルメニューブック(セルフオーダー端末)の導入。全国の各レストラン店舗へフロアサービスロボットの導入を進めており、2022年中に2,149店舗に対し3,000台を配置した。
飲食店が抱える課題とDX推進の背景
アフターコロナ以降も飲食店が抱えている・解決しなければならないと言われている主な課題を見ていきましょう。
人手不足
アフターコロナ以降、2022年の帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2022年4月)」によると、人手不足割合が上昇し、経営課題として浮上。特に「飲食業」と「ホテル業」においてその傾向が顕著であることが報告されています。
コロナの影響による退職者や解雇したスタッフの穴埋めができていないという現状に加え、飲食業はコロナ以前にも慢性的な人手不足を抱えていた業界でもあります。
通常営業に伴う人手不足に加え、コロナ渦で定着したテイクアウト・デリバリーに要する新たな人材不足も問題になっています。
売上の低下
新型コロナウィルス感染対策として、密を避けるために座席の間隔や店内スペースを確保するため席数を減らしたことで、ウィズコロナの時代となっても以前より稼働数は低下したことにより、売上に影響を及ぼしていると言われています。
また時短営業や営業自粛による顧客離れ、リモートワークの定着により駅周辺やオフィス近くの飲食店ではランチでの利用や帰宅前に呑みに立ち寄る常連客の来店が減るという影響も出てきました。
必要経費の拡大
ウィズコロナの時代でも特に飲食店では、従業員のマスクや手袋、来店時の手消毒や体温測定器、テーブル清拭のための消毒液といった設備や備品代など、コロナ以前では不要であった経費が拡大しています。
感染リスクを軽減させるための必要経費ではありますが、金銭的な負担となっている飲食店も少なくありません。
コスト削減・適正化が難しい
飲食店経営において、最も大きなコストであるのが、食材原価と人件費です。飲食店の経営者は、適切なコスト意識とコスト管理ができなければ店舗を続けることができません。
その重要な指標となるのが「FLコスト」と「FLコスト比率」です。「F」はFoodで原価、材料費を示し、「L」はLabor(労働)で人件費を示します。
- FLコスト=食材原価と人件費
- FLコスト比率(%)=売上高に占めるFLコストの比率。計算式は、(食材原価+人件費)÷売上×100
FLコスト比率は60%以下が適正値とされます。その内訳は、食材費24~40%、人件費20~36%ほどが目安と言われています。
近年ではヨーロッパやイスラエル情勢のため、食材原価や石油原価が上がり、日本でも全体的に物価高となっています。そのため飲食店でも営業を続けるため、やむを得ずメニュー価格を上げている店舗が数多くあります。
DX推進や課題解決にはコンサルに相談してもOK
DXをどのように進めてよいか分からない、そもそも抱えている課題が多すぎてDXを推進する余裕がない、という飲食店経営者はまずは飲食業界専門のコンサルタントに相談することをお勧めします。
デジタルツールやなんらかのシステムを導入しなくても、既存の業務フローを改善するだけで抱えている課題が解決するかもしれません。
その後、新たな競争力を手に入れるためにDX促進に取り掛かっても良いのではないでしょうか。ともかくDX推進の前には必ず店舗・スタッフが抱える抱える課題を洗い出し、業務全般を見直すことからスタートしましょう。
スマートマットクラウドで飲食店の在庫管理・発注・棚卸を自動化
スマートマットクラウドは、現場のあらゆるモノをIoTで見える化し、在庫管理・発注を自動化するDXソリューションです。スマートマットの上に管理したいモノを載せ、スマートマットのシリアルNoと管理商材を紐づけるだけで設置が完了。
あとはマットが自動でモノの在庫を検知、クラウド上でデータを管理し、適切なタイミングで自動発注や発注アラートを発信してくれます。
タグやバーコードの貼り付け・読み取りなどの作業負担もなく、管理画面から実在庫の自動記録や確認ができます。在庫を確認するために、わざわざバックヤードに行ったり、冷蔵庫・冷凍庫の中を探す手間や時間が省け、接客や調理に集中できますよ。
さまざまな自動発注に対応
お客様の発注先に合わせた文面でメール・FAXの送信が可能です
在庫圧縮を促進
推移を把握できるグラフで適切な在庫量を判断し、在庫圧縮を促進します
置く場所を選びません
スマートマットはA3サイズ〜A6サイズまでの4サイズ展開。ケーブルレスで、冷蔵庫・冷凍庫利用も可能。
API・CSVでのシステム連携実績も多数
自社システムや他社システムと連携を行い、より在庫管理効率UPを実現します。
安心サポート
現場への導入に向けては、専門のカスタマー・サクセス担当が、お客様を厚くサポートします。
スマートマットクラウドで飲食店DXに成功した事例